これまで、生前対策というと遺言書が一般的でしたが、遺言書では実現できないこともありました。
2006年に誕生した家族信託は、より円滑な遺産承継や柔軟な財産管理ができる生前対策として昨今注目が高まっています。
ここでは、比較的新しい制度である家族信託と従来の生前対策として定着していた遺言書の違いについて、ご説明いたします。
なお、遺言書と家族信託はどちらか一方だけという決まりはなく、併用することも可能です。両方を適切に併用することによって、より安心した生前対策を実現することができます。
家族信託と遺言書の違いや併用することのメリットについて確認していきましょう。
家族信託と遺言書の違いとは
家族信託と遺言書は、生前対策の手法として比較されることも多く、特徴に大きな違いがあります。
効力が生じるタイミング
家族信託と遺言書は効力が生じるタイミングがそれぞれ異なります。
- 家族信託・・・信託契約締結をした時から効力が生じます。そのため、契約で決めた内容がご自身がお元気なうちから開始されます。ご自身の判断能力がお元気なうちに家族信託契約を締結しておくことによって、認知症になった場合でも信頼できる受託者が財産管理を行ってくれます。結果、ご家族の負担を最小限に抑えて円滑な財産管理が可能となります。
- 遺言書・・・遺言者が亡くなり、相続人が遺言書を開封することで効力が生じます。遺言者がご存命であるうちは遺言書の内容は実現できません。
財産の承継先と範囲について
例えば、先祖代々受け継いできた不動産(土地)を今後も引き続き承継したいとお考えの場合、それぞれどのような遺産承継の特徴があるのかご確認ください。
遺言書の場合
「長男〇〇に承継する」というように、遺言者の次の代までの指定しかできません。
家族信託の場合
「息子から孫へ」というように、次の代以降の承継先も指定することが可能です。
家族信託と遺言書を併用する
家族信託と遺言書は併用することができます。したがってそれぞれの不足部分を理解した上で利用するとより円滑な遺産承継を行うことができます。
信託財産以外の財産の指定は遺言書で
家族信託での受託者が管理運用を行うことができるのは信託財産のみです。家族信託で遺産承継をする場合、信託財産に設定した財産は承継されますが、それ以外の財産を相続する際には相続法が適用されます。
家族信託では、農地は信託することができません。また、借地権を信託する場合には地主から承諾を得る必要があるため、地主の許可を得られないと信託財産に設定することはできません。信託財産以外の財産について相続の際どう承継すればよいのか遺言書に記載が無い場合には、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
遺言書がある場合には、相続の際相続人全員での遺産分割協議を行う必要はありません。このため遺言書は相続人同士のトラブル回避に有効な方法です。
相続人全員で遺産の分割方法について話し合うことを遺産分割協議といいます。相続人全員が参加・合意する必要があるため相続人同士で意見が対立してしまった場合、遺産分割協議がまとまりません。遺産分割協議が進まないと、相続手続きを進めることができません。
このようなトラブルを防ぐ対策として、ご自身がお元気なうちにできる家族信託と遺言書の併用をおすすめいたします。家族信託で信託財産にできない財産については遺言書で承継先を指定しておくなどして、家族信託と遺言書を適切に利用し残されるご家族の負担を少しでも軽減できるような対策をしておきましょう。