ご家族が亡くなり相続が発生すると、亡くなった方(被相続人)が生前に所有していた財産は、相続人全員で共有している状態となるため、遺産分割協議を行い、財産の分け方を相続人全員で決める必要があります。
遺産分割協議は相続人全員が参加し、全員が協議内容に合意する必要がありますが、相続人の中に未成年者や、認知症等の理由で判断能力が不十分な方がいることもあれば、そもそも連絡が取れない人がいて相続人が揃わないというケースもあります。
このように、未成年者、認知症等で判断能力が不十分な方、行方不明者などの相続人がいると、相続手続きを進められなくなってしまいます。たとえご家族であっても、正当な代理権もないままこれらの方々に代わって署名や押印などを行うことは違法行為です。
当ページではこのような場合に相続手続きを進める方法をご紹介いたしますので、必要な手続きを適切に行い、正しく相続手続きを進めていきましょう。
認知症等で判断能力が不十分な相続人がいる場合
遺産分割協議は法律行為にあたりますので、認知症等の理由で判断能力が不十分な方は、遺産分割協議への単独での参加は認められません。
このような場合は、正当な代理権をもつ後見人を選任してもらい、遺産分割協議に代理参加してもらいましょう。後見人の選任は、家庭裁判所へ申立てを行います。
【後見人選任の手順】
- 家庭裁判所に対して後見開始の申立てを行う
- 家庭裁判所による後見人の選任(症状の度合いによって後見人の種類は異なります)
判断能力がほとんどない場合:成年後見人
判断能力が著しく不十分な場合:保佐人
判断能力が不十分な場合:補助人 - 後見人が参加のうえで、遺産分割協議を相続人全員で行う
- 取得した財産に応じて名義変更を行う
なお、後見人が選任されるために、まずは認知症の方の鑑定を要する場合もあります。
また、後見人が選任されるまでに1~2か月かかる場合もあるため、認知症等の方がいる場合には早急に相続の専門家に相談されることをおすすめいたします。
未成年者の相続人がいる場合
一般的な法律行為の際には親権者が未成年者の代理人となるケースが多いですが、相続の場合は親権者が未成年者の代理人になることはできません。なぜなら、相続では親子共に相続人となることも多く、利益相反が生じてしまうからです。このようなときは、特別代理人の申立てを家庭裁判所に対して行い、選任された代理人が遺産分割協議に参加します。
行方不明の相続人がいる場合
相続人の中にまったく連絡がとれず行方不明になっている人がいる場合、相続手続きを進めるために下記のいずれかを行います。
- 失踪宣告をする
- 不在者財産管理人を選任してもらう
いずれの手続きも、必要書類を準備し家庭裁判所へ申立てる必要があります。